2025.03.03

ウレタンフォームとは?その化学と種類を解説

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  • マテリアル研究開発室

日常生活でよく目にするベッドや自動車のシート、冷蔵庫の断熱材など、これらの製品に欠かせない素材が「ウレタンフォーム」です。柔らかさや硬さ、弾力性など用途に応じた特性を持つウレタンフォームですが、その秘密は化学反応と添加剤にあります。この記事では、ウレタンフォームの基本的な化学から種類、さらには重要な役割を果たす「シリコーン整泡剤」まで、わかりやすく解説します。

目次

    ウレタンフォームの化学反応とは?

    ウレタンフォームは、ポリウレタンをベースにした発泡素材です。ポリウレタンは、イソシアネート化合物と末端にOH基を持つポリエーテル化合物(ポリオールと呼ばれる)の反応で合成されます。この反応に「発泡剤」を加えることで、スポンジ状のウレタンフォームが作られます。

    ウレタン結合の化学式

    発泡剤としてよく使われるのが「水」です。水がイソシアネートと反応すると、不安定なカルバミン酸が生成され、これが分解してアミンと二酸化炭素を放出します。この二酸化炭素が気泡となり、ウレタンが膨張してフォーム状になります。さらに、生成したウレタンやアミン、ウレア内のNH結合がイソシアネートと追加反応を起こし、架橋構造を形成します。これがウレタンフォームの強度や特性を支えます。

    カルバミン酸がアミンと二酸化炭素を発生させる化学式

    ウレア結合の化学式

    水以外にも、シクロペンタンなどの低沸点炭化水素や代替フロンが発泡剤として使われることがあります。これらは反応熱で気化し、フォームを形成します。そして、この泡を安定させ、細かく均一な形状にするために欠かせないのが「シリコーン整泡剤」です。

    ウレタンフォームの種類と用途

    ウレタンフォームは用途や特性に応じて、大きく3つの種類に分けられます。それぞれの特徴と使われるシーンを解説します。

    軟質ポリウレタンフォーム

    ベッド軟質ポリウレタンフォームは、柔らかさが特徴で、主に家具や日用品に使われます。製造方法には「スラブ」と「ホットモールド」の2種類があります。

    スラブフォーム: 開放された型で発泡させた後、裁断して使用します。ベッドやクッションなどに適しています。
    ホットモールド: 密閉した金型内で発泡させ、形状を整えるタイプです。
    化学的には、2官能のイソシアネートと3官能のポリオールを反応させて作られ、架橋点とポリエーテル由来のソフトセグメントが柔軟性を生み出します。

    HRフォーム(高弾性フォーム)

    自動車のシート軟質フォームの一種ですが、反発弾性が高いのが特徴で「HR(High Resilience)」と呼ばれます。ポリオールの反応性を高め、ポリマーポリオール(ポリオールにポリアクリロニトリルやポリスチレンの微粒子を分散させたもの)を配合することで実現します。自動車のシートなどに多く使われ、金型で成形されるのが一般的です。

     

     

    硬質ポリウレタンフォーム

    冷蔵庫硬質タイプは、柔軟性が少なく、しっかりした構造が求められる用途に適しています。イソシアネートにはポリメリックMDI、ポリオールにはシュガーや多価アルコールなど、多官能の原料を使用します。架橋点が多く、分子量の小さいポリオールによりソフトセグメントが少ないため、硬い仕上がりになります。冷蔵庫や住宅の断熱材として活躍します。

     

     

    シリコーン整泡剤の役割とは?

    ウレタンフォームの製造において、泡の安定性や形状を整えるために欠かせないのが「シリコーン整泡剤」です。特に、ポリエーテル変性シリコーンが広く使われています。なぜなら、シリコーンに結合したポリエーテル基が、ウレタンフォームの主成分であるポリエーテルと相性が良く、液膜に溶け込みやすいからです。

    ポリエーテル変性シリコーンの構造の一例
    【ポリエーテル変性シリコーンの構造の一例】

    シリコーン整泡剤の仕組み

    シリコーン整泡剤のポリエーテル基は液膜に溶け込み、シリコーン主鎖が表面に配向します。これにより、液膜の表面張力を下げ、泡が安定します。表面張力が高いと液膜が破れやすくなるため、この作用が非常に重要です。

    シリコーン整泡剤の作用の様子
    【シリコーン整泡剤の作用の様子】

    求められる性能

    整泡剤には、発泡が終わるまで泡を安定させつつ、硬化後に適度に膜が破れるよう適度なバランスが求められます。
    このため適切なシリコーン整泡剤(後述)を用いた上で、適切な量を添加する必要があります。
    添加量が少ない場合: 発泡完了前に膜が破れ、泡が粗くなったりフォームが陥没したりします。
    添加量が多すぎる場合: 発泡完了後もガスが抜けず、温度低下でフォームが収縮するリスクがあります。
    このため、シリコーン整泡剤の種類や添加量は、用途に応じて慎重に調整されます。

    整泡剤の添加部数による発泡の比較
    【整泡剤の添加部数による発泡の比較(小 ← 整泡剤の添加部数 → 大)】

    用途別シリコーン整泡剤の設計

    用途別シリコーン整泡剤の設計
    液膜の安定性は「HRフォーム>硬質フォーム>軟質スラブ・ホットモールド」の順に強いです。整泡剤の安定化力はシリコーン主鎖、ポリエーテル側鎖とも長い方が高く、一般に次のようなポリエーテル変性シリコーンが用いられます(強い液膜には弱い整泡剤が良く、弱い液膜には強い整泡剤が必要)

    軟質スラブ、ホットモールド用 シロキサン分子量、ポリエーテル分子量共に大きい
    HRモールド用 シロキサン分子量、ポリエーテル分子量共に小さい
    硬質用 シロキサン分子量、ポリエーテル分子量共に中程度

    異なる処方に適さない整泡剤を使うと、陥没や収縮、断熱性低下などの問題が起こります。例えば、軟質フォーム用の強い整泡剤を硬質フォームに使うと、ガスが抜けず収縮してしまうため、本来の断熱性能が発揮できなくなります。

      軟質フォーム用整泡剤 硬質フォーム用整泡剤 HRモールドフォーム用整泡剤
    軟質スラブフォーム処方 陥没 陥没
    硬質フォーム処方 断熱性低下 セル粗い~陥没
    HRモールドフォーム処方 収縮 収縮

    まとめ

    ウレタンフォームは、その化学反応とシリコーン整泡剤の働きによって、多様な特性を持つ素材として私たちの生活を支えています。柔軟性のある軟質フォーム、高弾性のHRフォーム、断熱性に優れた硬質フォームのそれぞれの用途に合わせた設計が、快適さや機能性を実現しています。