モータ雑学第3回(高効率モータの種類)
- 社会インフラ部門
第3回目は、高効率モータの種類についてのお話です。
モータにはさまざまな種類があり、用途や環境に合わせて選定をします。高効率モータの種類として三相誘導モータ(IM)、永久磁石モータ(PM)、リラクタンスモータ(SynRM)の構造と特徴について説明します。
1.三相誘導モータ(IM)
IMの構造は軸(シャフト)と一体に回転する回転子(ロータ)と、ロータと相互作業してトルクを発生させる固定子(ステータ)、回転するシャフトを支える軸受(ベアリング)、発生した熱を冷ます外扇ファン、それらを保護するフレーム、ブラケットからなります。
ステータに交流電流を流すことで、ロータに誘導電流を発生させ、その電流と回転する磁場の相互作用によってロータがつられて回る仕組みを応用しています。
IMは①構造が簡単かつ安価であり、②三相交流電源から直接運転が可能な点が大きなメリットです。
ロータ導体に電流が流れることから発熱による損失(二次銅損)が生じるために効率は低くなります。
高効率化には各部材にて極限まで損失を低減する工夫が必要となります。
2.永久磁石モータ(PM)
PMはロータに永久磁石(レアアース)を埋め込んだ構造をもちます。
ステータに流した電流によって生じる回転磁界とロータに内蔵された永久磁石の磁力でロータが回転します。
誘導電流を発生しない構造ですので、ロータで生じるエネルギーロス(二次電流による損失)が発生せず、より高効率な運転が可能です。
ステータに流れる電流値を制御し、回転磁界をロータ位置に合わせて発生させるために、インバータでの駆動が必要となります。
出典:日本電機工業会 |
PMはIE4(スーパープレミアム)以上の効率レベルを達成しており、その構造から以下の特徴があります。
①小型軽量化
IMより損失を小さくできるため小形・軽量化が可能です。IMとの互換性を考慮し同一枠番としてより高効率化したものもあります。
②速度制御精度の向上
PMは負荷の大きさに応じて回転速度が変化しないため、速度制御精度に優れており、製造ラインや工作機械等にも適用されています。
ロータに永久磁石を使用しているため、レアアースの価格の高騰や安定供給に対する不安があります。
レアアースで圧倒的シェアをもつ中国では、IMよりPMの方が安価との話も聞きます。 また、分解時には専用の治具が必要となります。
3.シンクロナスリラクタンスモータ(SynRM)
SynRMの効率性のカギは特殊なロータ設計にあります。
ロータに永久磁石も導体も使用せず、磁気抵抗の差(磁気的な突極性)を設けて、ロータに働く磁気力を利用したモータです。
ロータは鉄だけでできており、空洞(フラックスバリア)により磁気的な突極性を得ています。
SynRMはIE5効率レベルを達成し、ロータ以外の部品はIMと共通であるため、高効率と省資源化を同時に達成したモータと言えます。
また、以下の特徴を有しています。
①メンテナンス性に優れている
ロータは簡素な構造で高い信頼性を確保しており、磁石を使用していないためロータ分解が容易です。
その他の部品はIMと同一です。
②省資源化を実現
レアアースを用いた永久磁石を使用しないため供給不安がなく、省資源化を実現しています。
③長寿命
モータの温度上昇が低減されるため軸受けなどの長寿命化が期待できます。
SynRMはPMと同様に同期モータであり、インバータでの始動が必須です。
運転中はロータの位置を正確に把握する必要がありますが、PMとは異なりロータに誘起電圧が発生しないため、
インバータに専用ソフトウェアを実装して制御をしています。