2025.1.07

ペロブスカイト太陽電池の知っておくべき4つのポイント

  • 電子デバイス部門
  • バッテリー営業部

太陽光を直接電気エネルギーに変換する太陽電池。光電効果を利用して太陽光を電気に変換し、再生可能エネルギーとして重要視されています。
その中でも、次世代の太陽電池技術として「ペロブスカイト太陽電池」が注目を集めています。ペロブスカイト太陽電池は、「ペロブスカイト」と呼ばれる結晶構造を持つ材料を使用することで、優れた光吸収特性と効率的なエネルギー変換能力を発揮し、低価格で高効率な発電が可能です。
この記事では知っておくべきポイントを4つ解説しますので、ぜひ参考にしてください。

目次

    ①ペロブスカイトの特性と応用

    ペロブスカイトとは

    立方体の格子の中に、3種類の異なる原子またはイオンが特定の位置関係で配置されているペロブス構造の図。立方体の角にある位置に原子(A site)、立方体の中心の原子(B site)、立方体の面の中心に原子(X site)が配置されている。

    ペロブスカイトとは、酸化鉱物の一種で、特定の結晶構造を持つ化合物群を指します。ペロブスカイトの構造は、化学式としてABX3という形で表され、A、B、Xはそれぞれ異なるイオンを指します。Aサイトには大きなカチオン、Bサイトには金属カチオン、Xサイトにはハロゲンや酸素イオンが位置します。この独特な結晶構造が、ペロブスカイトに多様な化学的性質をもたらしています。この結晶構造は、酸化カルシウムや酸化チタンなど、さまざまな化合物に見られ、特にその構造の柔軟性が注目されています。この特性により、さまざまな元素を組み合わせて、異なる物理的特性を持つ新しい材料を合成することが可能です。ペロブスカイト構造を持つ材料は、光を効率的に吸収する特性があり、電荷輸送特性にも優れているため、従来は超電導やLEDなどで使用されていました。近年では、太陽光発電技術に革新をもたらす材料として非常に注目されています。従来のシリコンベースの技術では実現が難しい高効率と低価格を両立する可能性を秘めており、持続可能なエネルギーの未来に向けた重要な役割を果たすと期待されています。

    そもそも太陽電池とは

    太陽電池とは、太陽光を直接電気に変換する装置であり、再生可能エネルギーの中でも特に注目されています。基本的には半導体材料で構成されており、光が当たるとそのエネルギーを利用して電子を放出し、電流を生成します。この仕組みは光起電力効果(Photovoltaic effect)と呼ばれ、太陽電池の核心的な原理です。現在、最も一般的な太陽電池はシリコン系をベースにしていますが、他にもガリウムヒ素(GaAs)やテルル化カドミウム(CdTe)を活用した化合物系やペロブスカイトなどの有機系など、さまざまな材料が研究開発されています。太陽電池は天候や昼夜の影響を受けやすく、発電量が不安定になることがあります。そのため、蓄電池や他のエネルギー源とのハイブリッドシステムが必要になることもあります。また、初期設置価格が高いとされていましたが、技術の進歩に伴い、製造価格は年々低減しています。現在は、効率性を高めるための新しい技術や材料の開発が進められており、太陽電池の普及がさらに加速することが期待されています。

    種類 発光効率 コスト
    シリコン系 結晶シリコン
    アモルファスシリコン(a-Si)
    化合物系 ガリウム砒素(GaAs)
    テルル化カドミウム(CdTe)
    有機系 色素増感
    ペロブスカイト ○ → ◎

    ②ペロブスカイト太陽電池の特徴

    ペロブスカイト太陽電池の仕組み

    ペロブスカイト太陽電池の基本的な仕組みは、ペロブスカイト材料が光を吸収し、これにより生成された電子と正孔が電流を生み出すというものです。このプロセスは、ペロブスカイト層と電極層の間で行われ、電力として取り出されます。ペロブスカイト層は一般に、金属ハライドと有機分子からなるハイブリッド材料で構成されています。これにより、エネルギー効率の良い発電が可能となり、将来の再生可能エネルギーの一翼を担うことが期待されています。

    ペロブスカイト太陽電池の構造は、上から電極層、電子輸送層、ペロブスカイト層(0.5~1㎛)、正孔輸送層、金属層(透明導電膜)と5つの層構造

    ペロブスカイト太陽電池のメリット

    1.低価格
    シリコンを基盤とした太陽電池に比べて、製造プロセスが比較的簡単であるため、材料の価格も安いです。また、ペロブスカイト太陽電池は低温プロセスで製造されるため、量産が容易で環境への負荷が少ない点も特徴です。これにより、より持続可能なエネルギーソリューションとしての位置づけが強調されます。

    2.軽量で柔軟柔軟性のある太陽光パネル
    現在普及しているシリコンを基盤とした太陽電池に比べて、ペロブスカイト太陽電池は非常に薄く、自由に曲げることもでき、さまざまな形状や用途に適した設計が可能です。また、柔軟性のある基板に印刷することができるため、建物の壁面や窓ガラス、さらに車体など形状やデザインに合わせた設置も可能です。

    3.高性能
    太陽電池は、太陽光を直接電気に変換するため、曇り空だと発電効率が落ちるとされています。
    一方で、ペロブスカイト太陽電池は、光の吸収力が強く、エネルギーの変換効率が高い点も特徴です。発電層内で発生した電子と正孔が電極までたどり着く距離が短いため、ロスなく発電できます。曇りでも雨の空や室内の照明でも比較的良く発電され、シリコン太陽電池に匹敵する性能を達成しています。この高効率は、広範な光吸収特性によるもので、紫外線から赤外線までの幅広い光を吸収し、電気に変換する能力があります。

    ③ペロブスカイト太陽電池の課題と解決策

    技術的課題

    ペロブスカイト太陽電池は、高効率なエネルギー変換性能と低価格での製造が可能という特徴から注目されていますが、いくつかの技術的課題が存在します。

    ・耐久性
    ペロブスカイト材料の安定性の問題が挙げられます。これらの材料は湿気や酸素に対して脆弱であり、劣化が早いという欠点があります。このため、長期間の使用に耐えうる耐久性を持たせることが重要です。例えば、封止技術や材料改良によって外部環境からの影響を最小限に抑える研究が進められています。

    ・量産性
    スケールアップに関する問題もあります。研究室レベルでは高効率が達成されていますが、大規模生産における品質の一貫性を維持することが課題となっています。これには製造プロセスの標準化や、インクジェット印刷などの新しい製造技術の開発が必要です。

    ・環境性
    鉛を含む材料が一般的に使用されていることも大きな課題です。鉛は環境に有害であるため、鉛フリーの材料開発が重要な課題となっています。最近では、鉛を使用しない新しいペロブスカイト材料の研究が進んでおり、環境に優しい選択肢が模索されています。

    ④ペロブスカイト太陽電池の市場と普及の可能性

    見据えるマーケット

    世界的な脱炭素化の動きが加速している中で、再生可能エネルギーが注目されています。
    特に、太陽光をエネルギーに変換する「太陽電池」は大きな役割を担っています。
    その中で、次世代太陽電池として注目を集めるペロブスカイト太陽電池は、市場が拡大し続けています。欧州や中国では、ガラス基板やタンデム型を中心に大規模な研究開発投資を行っており、日本ではフィルム型を中心に開発が進められています。ペロブスカイト太陽電池は柔軟性があるため、建物一体型太陽光発電(BIPV:Building-integrated photovoltaics)やソーラーカーへの応用など、多様な市場ニーズに応えることで、さらなる普及が期待されています。
    このように、ペロブスカイト太陽電池は多岐にわたる応用分野を持ち、今後も市場拡大が見込まれる有望な技術です。
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    ※BIPV(Building-integrated photovoltaics):太陽光パネルを建物の一部として統合した発電システム。
    建物の外壁、屋根、窓などの建材として太陽光パネルを組み込むことで、建物と発電システムが一体となる仕組みです。

     

    今回は、「ペロブスカイト太陽電池」について解説してきました。
    ペロブスカイト太陽電池は、次世代の太陽電池技術として注目されており、シリコンベースの技術に比べて低コストで高効率な発電が可能です。課題としては、材料の安定性や鉛使用の問題等ありますが、鉛フリー材料の開発も行われています。ペロブスカイト太陽電池は、再生可能エネルギー分野での普及が期待されています。


     

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